この記事では、寅さん映画シリーズの「男はつらいよ 奮闘篇(第7作)」の作品の見どころを解説していきたいと思います。
目次
映画「男はつらいよ 奮闘篇(第7作)」の予告編動画
映画「男はつらいよ 奮闘篇(第7作)」の作品データ
公開日 | 1971年4月28日 |
上映時間 | 91分 |
マドンナ | 榊原るみ |
ゲスト | ミヤコ蝶々/田中邦衛/柳家小さん |
監督・原作 | 山田洋次 |
スタッフ | 製作:斎藤次男 企画:高島幸夫/小林俊一 脚本:山田洋次/朝間義隆 撮影:高羽哲夫 美術:佐藤公信 音楽:山本直純 録音:中村寛 調音:小尾幸魚 照明:内田喜夫 編集:石井巌 監督助手:今関健一 装置:小野里良 装飾:町田武 進行:長島勇治 衣装:東京衣装 現像:東京現像所 制作主任:池田義徳 |
協力 | 柴又神明会 |
主題歌 | 男はつらいよ |
観客動員数 | 926,000人(シリーズ42位) ⇒「寅さんシリーズランキング」 |
同時上映 | 「花も実もある為五郎」 |
啖呵売した商品 | 鎌倉彫の下駄、易本(暦本・人相・手相) ⇒「寅さんが啖呵売した作品別全商品リスト」 |
受賞歴 | ■第26回毎日映画コンクール監督賞/山田洋次 |
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「男はつらいよ 奮闘篇(第7作)」のロケ地情報
「男はつらいよ 奮闘篇(第7作)」のロケ地「男はつらいよ 奮闘篇(第7作)」作品のあらすじ
「嫁さんをもらう」という寅次郎の手紙をもらった母・お菊(ミヤコ蝶々)が、京都から訪れてくる。
久しぶりに柴又に帰ってきた寅次郎は、お菊に会うために宿泊中の帝国ホテルまで出向くが、結婚もせずに恋愛ばかりしていることを母親にとがめらケンカとなる。
「べっぴんの嫁さんを連れてきてやる!」と、母親に啖呵を切った寅次郎は、そのまま旅に出てしまう。
しばらくして、寅次郎は沼津のラーメン屋で集団就職から逃げ出してきた少女・花子(榊原るみ)と出会う。
花子が知的障害であることを知った寅次郎は、放っておくことができなくなり、彼女の故郷である青森行きの切符と、迷った時の保険として「とらや」への住所を書いたメモを渡して見送る。
どうしても花子の行方が気になって仕方がない寅次郎は、再び「とらや」へ舞い戻ってくる。
「とらや」で何気なく暮らしている花子の様子を見て安心した寅次郎は、花子の身の回りの面倒をすべて見るようになり、いつしか花子との結婚までも考えるようになる。
ある日、花子の先生・福士先生(田中邦衛)が青森から突然「とらや」に訪れてきて、花子を故郷に連れて帰ってしまう。
花子の面倒をすべて見ると決めていた寅次郎はショックを受け、そのまま「とらや」を出ていってしまう。
「男はつらいよ 奮闘篇(第7作)」作品のキャスト
- 車寅次郎:渥美清
- さくら:倍賞千恵子
- 花子:榊原るみ
- 冬子:光本幸子(特別出演)
- 菊:ミヤコ蝶々
- 福士先生:田中邦衛
- 巡査:犬塚弘
- ラーメン屋:柳家小さん
- 博:前田吟
- おばちゃん:三崎千恵子
- 梅太郎:太宰久雄
- 源公:佐藤蛾次郎
- おじちゃん:森川信
- 御前さま:笠智衆
<サブキャスト>
福原秀雄/小野泰次郎/城戸卓/江藤孝/長谷川英敏/山村桂二/高畑喜三/北竜介
マドンナ:榊原るみ
<役名:太田花子>
青森県から集団就職で静岡県の紡績工場で働いていた知的障害を持つ少女。
仕事が務まらず、田舎に帰ろうとしていたところを寅次郎に救われる。
「寅ちゃんのヨメコになる」と口に出したことで、寅次郎の結婚願望に火をつけてしまうが、青森から迎えに来た福士先生の登場で故郷へ帰っていくことに。
男はつらいよシリーズの中でも異色と言える知的障害者をマドンナに設定。
しかも、榊原るみは寅次郎のマドンナ役として最も若い、20歳という年齢でマドンナ役に抜擢される。
思わず助けたくなるような、純真無垢な少女をうまく演じ切っている。
→「「男はつらいよ」に登場した寅さんの歴代マドンナ47人を徹底ガイド」
ゲスト:ミヤコ蝶々
<役名:お菊>
寅次郎の実の母親。
かつて葛飾で芸者をしていた頃に、寅次郎の父・車平造と出会い、子供(寅次郎)を授かる。
寅次郎を産んですぐ、単身で京都へ移り住み、グランドホテルの経営者として働くようになる。
いざ息子を目の前にすると嫌味ばかり口に出してしまうが、本当は心から寅次郎のことを気にかけている。
2作目「続・男はつらいよ」で初登場してから約1年半ぶりの再登場となる。
最後の方で寅次郎から花子と結婚する知らせを聞いて喜ぶお菊が映し出されるが、このシーンを最後にお菊が登場することはなかった。
ゲスト:田中邦衛
<役名:福士先生>
青森の花子の先生。
花子を静岡の紡績工場で働かせることに反対をしていたが、それを食い止めることができずに悔やんでいた。
行方知れずになった花子を心配していたが、「とらや」で暮らしていることを知り、はるばる青森県から花子を迎えに来る。
渥美清との絡みがなかったことが残念でならない。
ちなみに、田中邦衛は第48作「男はつらいよ 寅次郎紅の花」にも出演しているが、その時も渥美清との絡みはなかった。
ゲスト:柳家小さん
<役名:ラーメン屋の店主>
花子と寅次郎が初めて出会った、静岡県沼津にあるラーメン屋の店主。
花子が知的障害を持つ少女であり、不幸な境遇で働いてきたことを寅次郎に伝える。
落語好きの山田洋次監督がキャスティングしたと言われている。
渥美清との絡みに物足りなさを感じるが、役者としての柳家小さん師匠の芝居が堪能できる。
「男はつらいよ 奮闘篇(第7作)」作品の見どころ
知的障害を持つ少女を寅次郎のマドンナ役として登場させるという、ある意味、挑戦的な作品と言える。
60年代に起こった集団就職(地方から首都圏へ若者が一斉に就職する流れ)をうまく絡めて描いており、この頃の日本の世相が垣間見れるようで面白い。
この作品での寅次郎は、手の届かないマドンナに恋焦がれる感じではなく、我が娘を可愛がる親の視点からマドンナを見つめているところが興味深い。
今まで「男はつらいよ」シリーズで描いてきた恋愛の形とはかなりかけ離れたものになっているが、最終的に寅次郎が結婚を意識するまでマドンナを好きになってしまうところは、他の作品と全く同じである。
しかも、今作で寅次郎はマドンナに対して一世一代とも言えるプロポーズをやってのけるのだ。
そのあたりも見どころと言っていいだろう。
花子はシリーズのマドンナの中で寅次郎の結婚相手に最もふさわし女性だった!?
「寅ちゃんのヨメコになるかなあ」と言っておきながら、寅次郎の真剣なプロポーズを全く聞いていないところからも、花子にとっての結婚は現実的なものでなく、ママゴトのようなものでしかない。
花子は知的障害を持った女性であり、いくら寅次郎がプロポーズをしたとしても、結婚についてどこまで理解できているかは想像すればわかることである。
そのことを冷静に判断できなくなっている寅次郎は、やはり「恋は盲目」という状態に陥っていると言えよう。
しかし、作品の中で登場するマドンナに対して、寅次郎がここまで素直に好きという感情を伝えたのは花子以外にいない。
唯一、何でも話せるリリー(浅丘ルリ子)に対してさえも、寅次郎は自らの恋愛感情を伝える行動はしなかった。
そういう意味で、今作に登場する花子は寅次郎にとって最も結婚に至る可能性の高いマドンナだったのかもしれない。
失恋した寅次郎が遺書をしたためたのも、花子に対する想いが強烈だったことの表れだろう。
寅次郎が自らで命を絶つ!?視聴者に「まさか!?」をイメージさせる巧みな演出
「寅次郎」と「死」は、全くもって結び付きにくい言葉である。
しかし、ラストシーンではその結び付きを想像してしまうような演出をして、視聴者を混乱に陥れる。
さくらの乗るバスの窓から、身投げした死体を捜索する救助隊が映し出された時、視聴者の誰もが「死体=寅次郎」と勝手に連想させられてしまうだろう。
しかし、視聴者の心配をよそに、寅次郎は陽気な姿でさくらの乗るバスに乗り込んでくるのだ。
その瞬間、「寅次郎」と「死」はやはり無縁だということを寅次郎自身が教えてくれる。
「俺、死んだと思ったか?」という寅次郎の問いに対して、さくらの「冗談じゃないわよ」という返しは見事である。
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