この記事では、寅さん映画シリーズの「男はつらいよ 寅次郎相合い傘(第15作)」の作品の見どころを解説していきたいと思います。
目次
映画「男はつらいよ 寅次郎相合い傘(第15作)」の予告編動画
映画「男はつらいよ 寅次郎相合い傘(第15作)」の作品データ
公開日 | 1975年8月2日 |
収録時間 | 90分 |
マドンナ | 浅丘ルリ子 |
ゲスト | 船越英二/岩崎加根子 |
監督・原作 | 山田洋次 |
スタッフ | 製作:島津清 企画:高島幸夫/小林俊一 脚本:山田洋次/朝間義隆 撮影:高羽哲夫 美術:佐藤公信 音楽:山本直純 録音:中村寛 調音:松本隆司 照明:青木好文 編集:石井巌 スチール:長谷川宗平 監督助手:五十嵐敬司 装置:小野里良 装飾:町田武 衣装:松竹衣装 現像:東京現像所 進行:玉生久宗 製作主任:内藤誠 |
協力 | 柴又新明会 |
主題歌 | 男はつらいよ |
観客動員数 | 2,000,000人(シリーズ13位) ⇒「寅さんシリーズランキング」 |
同時上映 | 「ザ・ドリフターズ カモだ!!御用だ!!」 |
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映画「男はつらいよ 寅次郎相合い傘(第15作)」のロケ地情報
「男はつらいよ 寅次郎相合い傘(第15作)」のロケ地「男はつらいよ 寅次郎相合い傘(第15作)」作品のあらすじ
11作目のマドンナ・リリー(浅丘ルリ子)が2年ぶりに「とらや」へ訪れてくる。
夫と別れて再び歌手になったことを「さくら」たちに告げると、仕事があると言ってそのまま「とらや」を後にする。
一方、寅次郎は青森で知り合った失踪中のサラリーマン・兵頭(船越英二)と出会い、北海道まで共に旅をすることになるが、函館のラーメン屋台でリリーと偶然の再会を果たす。
しばらく三人で北海道を旅して回るが、寅次郎の軽はずみな言動がきっかけでリリーとケンカ別れしてしまう。
後悔を残したまま寅次郎は柴又の「とらや」に帰ってくるが、そこに偶然居合わせたリリーと出くわし、お互いに反省している気持ちを確認し合うと、いつもの仲のいい関係に戻っていく。
ある日、「さくら」はリリーが寅次郎と結婚してくれたらという淡い期待を抱きながら、思い切ってリリーにそのことを告げてみるが・・・。
「男はつらいよ 寅次郎相合い傘(第15作)」作品のキャスト
- 車寅次郎:渥美清
- さくら:倍賞千恵子
- 竜造:下條正巳
- 博:前田吟
- つね:三崎千恵子
- 社長:太宰久雄
- 源公:佐藤蛾次郎
- 満男:中村はやと
- 奴隷商:吉田義夫
- 信子:岩崎加根子
- 君子:久里千春
- 鞠子:早乙女愛
- 兵頭謙次郎:船越英二
- 御前様:笠智衆
- リリー:浅丘ルリ子
<サブキャスト>
笠井一彦/羽生昭彦/長谷川英敏/渡辺隆司/渡辺紀行/大杉侃二朗/城戸卓/北竜介/宇佐美ゆふ/村上記代/谷よしの/後藤泰子/秩父晴子/戸川美子/光映子/米倉斉加年/上條恒彦
マドンナ:浅丘ルリ子
<役名:リリー>
全国を旅しながら歌う、さすらいの歌手。
11作目の時に寿司屋の職人と結婚するが、その後堅気の商売には向かずに離婚している。
寅次郎とは、旅先の北海道函館のラーメン屋台で偶然に再会する。
「さくら」たちに結婚の話を無理やり持ち出されたことで、うまくいっていた寅次郎との仲が裂かれてしまう。
⇒リリー(浅丘ルリ子)の人物紹介-「男はつらいよ」に登場するマドンナ この記事では、映画「男はつらいよ」で最も多くマドンナ役で登場したリリーの人物像に迫っていきたいと思います。 「男はつらいよ」シリーズを語る上で、このリリーというマドンナの存在を無視することはできません ...
リリー(浅丘ルリ子)の人物紹介-「男はつらいよ」に登場するマドンナ
寅次郎とリリーが紡いだ愛の物語4部作の第2作目の作品となる。
今作では、ケンカを繰り返しながら二人の仲が深まっていき、リリーが寅次郎にとって特別なマドンナであることが形付けられていく。
→「「男はつらいよ」に登場した寅さんの歴代マドンナ47人を徹底ガイド」 この記事では、「男はつらいよ」シリーズに登場した寅さんと満男の歴代マドンナを詳しく紹介していきたいと思います。 「男はつらいよ」全49作に登場したマドンナは47名にものぼり、寅さん映画の華を飾ってくれ ...
「男はつらいよ」に登場した寅さんの歴代マドンナ47人の紹介と演じた女優さん徹底ガイド
ゲスト:船越英二
<役名:兵頭謙次郎>
一流企業会社に勤めるサラリーマン。あだ名は、パパ。
妻子を持つ立場であるにもかかわらず、ある朝、会社に出勤すると家を出たきり行方をくらましてしまう。
寅次郎とは青森県の八戸で出会い、寅次郎の自由気ままな生き方に共感し、そのまま北海道まで付いていく。
小樽に住む初恋の人・信子(岩崎加根子)が夫と死に別れたという話を聞いて会いに行くが、何もできないまま逃げるようにその場を後にする。
サラリーマンが寅次郎の生き方に憧れるパターンはシリーズ中に何度か描かれるが、この兵頭もそのうちの一人。
ゲスト:岩崎加根子
<役名:堀田信子>
兵頭(船越英二)が生涯で一番愛したという初恋の女性。
兵頭が学生時代に東京で出会った女性であるが、出身は小樽。
二年前に夫と死別し、今は小樽で喫茶店ポケットを経営している。
「男はつらいよ 寅次郎相合い傘(第15作)」作品の解説
この作品は、11作目の「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」に登場したマドンナ・リリー(浅丘ルリ子)が2年後に寅次郎と再会するという物語から始まる。
寅次郎とリリーをテーマにした作品は全部で4作品あるが、2作目となる今作では、ケンカを繰り返しながら二人の仲が深まっていく様子が描かれる。
リリーの夢を叶えたいと語り出す寅次郎のアリア、メロン騒動、雨の日の相合い傘、突然結婚の話を持ち出されたことで裂かれてしまう二人の別れのシーンなど、寅次郎とリリーが織りなす名場面がこの作品にはたくさん散りばめられている。
そして、オープニング(歌の部分)で、兄の身を案じながら自転車を漕いでいく「さくら」の姿が映し出されるのもこの作品の特徴的なところであり、まるでこの作品の結末を暗示するオープニングになっているようで面白い。
夢のシーン
海賊タイガー(寅次郎)が、奴隷として捕らえられた葛飾島の人たちを救う夢。
映画を観ながら寝落ちしたため、終わり方が映画風になっているのが面白い。
10作に登場した岡倉金之助(米倉斉加年)と、14作に登場した大川弥太郎(上條恒彦)が海賊役で登場している。
洋画風の演出のため、さくらの名前がチェリーとなっている。
→男はつらいよシリーズ全夢のシーン紹介ページ この記事では、映画「男はつらいよ」のオープニングで流れる寅さんの夢のシーンをすべてまとめてみました。 シリーズ全49作中、夢のシーンが含まれるのは全部で34作品。 人が眠っている時に見る夢というのは、 ...
映画「男はつらいよ」オープニングの寅さんの夢のシーン全まとめ
相思相愛なのに決して結ばれることのない寅次郎とリリーの男女のあり方に対する価値観のズレ!?
「冗談にしなければ、二人は結ばれたのに!」と、映画を観た誰もが心の中でつぶやいたことだろう。
でも冗談にしなければ、その場が収まらない二人なのだから、これはこれで仕方がない。
今作は、11作の「忘れな草」の時と違い、ささいなケンカを繰り返しながら、寅次郎とリリーがまるで恋人であるかのような深い関係を築き上げていく。
ところが、作品の中で二人が語るセリフの中から、寅次郎とリリーの間には男女のあり方に対する価値観のズレがあるのがわかる。
そのセリフは、以下の部分だ。
北海道の波止場で、兵頭が「僕は一人の女性すら幸せにできないダメな男なんです。」と語るセリフに対して、リリーが返したセリフだ。
このセリフからもわかるように、リリーは「女が幸せになるには男の力は必要ない」という、自立した価値観の元に生きている。
それに対して、ラストシーンでリリーが去っていった直後に、寅次郎は以下のようなセリフを「さくら」に語って聞かせている。
寅次郎は「女が幸せになるには男の力が必要だ」という、リリーとは真逆な価値観の元に生きているのがわかる。
この相反する二人のセリフは、意図して脚本に組み込まれていたのかはわからないが、根本的に男女のあり方に対する価値観のズレが、この二人の間には起きているように思えてならない。
兄・寅次郎を想う「さくら」視点で描かれたもう一つの物語
この作品は、寅次郎とリリーの物語を描きつつも、裏では「さくら」視点での物語も展開されていることを伝えておきたい。
それを物語っているのが、オープニング(歌の部分)で江戸川の土手を自転車で走っていく「さくら」が、兄を思い出すかのようにふと足を止める映像が挿入されているところだ。
しかも、このオープニング映像の中に寅次郎は一切登場することなく、「さくら」を追いかけるような形でとらやへ向かうまでの映像が流れていく。
寅次郎が一切登場しないオープニングは、シリーズ中どの作品を観ても他にはない。
間違いなく、意図的な演出だろう。
開始早々に、「さくら」は離婚したリリーと再会し、再びリリーと寅次郎の出会いを予感するフラグが立つ。
兄・寅次郎とリリーとの結婚を一番望んだのは「さくら」であり、二人に結婚の話を持ち出したのも「さくら」である。
そして、出て行くリリーを引き止めるように寅次郎に強く促したのも「さくら」である。
この作品ほど、「さくら」が兄の結婚を現実的なものとして捉え、強く後押しした作品は他にはないだろう。
泊まる所がなくなったリリーを「さくら」が自分のアパートに泊めてあげるシーンがあるが、もしかしたら、あのシーンはいずれ義理の姉妹になってもうまくやっていける「さくら」とリリーの未来の姿を映し出そうとしていたのかもしれない。
この作品は、兄が幸せになることを望み、その望みを叶えられずに別れていった二人を悲しむ、「さくら」のもう一つの満たされない物語が展開されているのだ。
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