この記事では、映画「男はつらいよ」シリーズで、渥美清さん演じる寅さんが使う口上のセリフを啖呵売、自己紹介、地口などに分けて紹介していきたいと思います。
特に、寅さんが使う啖呵売の口上は、語呂がよく、聞いているだけど心地よさを感じてしまいますね。
今回は、そんな寅さんの口上をまとめてみました。
寅さんが使う啖呵売の口上フルバージョン集
映画「男はつらいよ」の作品で、寅さんが啖呵売でよく使っている口上を1つにまとめたものです。
寅さんの啖呵売の口上は、1~9までの数字が続いていく形で構成されています。
作品の中では断片的に使われている場合が多く、その時々においてアドリブが入って言い回しが変わっているようなこともあります。
今回は、寅さんが啖呵売でよく使っている口上を1つにまとめた音声と、セリフを紹介します。
寅さんの啖呵売の口上フルバージョン音声泥棒の始まりが石川の五右衛門なら、博打打ちの始まりが熊坂の長範。
はじめばかりでは話にならない、続いた数字が二。
兄さん寄ってらっしゃいは吉原のカブ、仁吉が通る東海道、憎まれ小僧が世に憚る。
仁木の弾正はお芝居の上での憎まれ役。
続いた数字が三つ。
どう?曲がったこの本、ね?
三、三、六歩で引け目がない、産で死んだが三島のおせん。
おせんばかりがおなごじゃないよ。
京都は極楽寺坂の門前で、かの小野小町が三日三晩飲まず食わずに野垂れ死んだのが三十三。
とかく三という数字は、あやが悪い。
続いて負けちゃおう。
この黒い本。
色が黒いか黒いが色か、色が黒くて食いつきたいが、わたしゃ入れ歯で歯が立たない。
色は黒いが味見ておくれ、味は大和の吊るし柿。
色が黒くて貰い手なけりゃ、山のカラスは後家ばかり。
続いた数字が四つ。
四谷赤坂麹町、ちゃらちゃら流れる御茶ノ水、粋な姉ちゃん立ちしょんべん。
白く咲いたが”ゆり”の花、四角四面は豆腐屋の娘、色は白いが水臭い。
一度変われば二度変わる、三度変われば四度変わる。
ね?淀の川瀬の水車、誰(たれ)を待つやらクルクルと。
続いた数字が五つ。
ごほん、ごほんと波さんが磯の浜辺で「ねぇあなた」。
昔武士の位を禄(ろく)<六>と言う。
かの後藤又兵衛が槍一本で六万石。
ロクでもない子供ができちゃいけないというので、教育修行の一環としてお父さん、買って頂きましょう、この絵本。
どうです?ね?真っ赤な表紙。
赤い赤いは何見て分る、赤いもの見て迷わぬものは、木仏金仏石仏。
千里旅する汽車でさえ、赤い旗見てちょっと止まると言うやつ。
七つ長野善光寺、八つ谷中の奥寺で手鍋さげてもわたしゃいとやせぬ。
あなた百までわしゃ九十九まで、共にシラミのたかるまで。
さぁー買い手がなかったら、わたくしこれで家業三年の患いと思って諦めます。
浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)じゃないが腹切ったつもりで負けましょう。
ね?これで買い手がなかったら、右に行って上野、左に行って御徒町、西と東の泣き別れというやつ。
ね?角は一流デパート赤木屋黒木屋白木屋さんで、
紅白粉(べにおしろい)付けたお姉ちゃんに下さい頂戴で願いますと、
六百が七百くだらない品物だが、今日はそれだけ下さいとは言わない。
どう?
タダでやっては義理が悪い。
ね?はい、僅かの二百だ!!
これで買い手がなかったら、しょうがない。
今日はこじきの行列だ!
ほら、持ってけこじき野郎!!
易(人相・手相)限定の啖呵売口上
易、暦本などの売をする時に、寅さんがよく使う口上です。
天に軌道のあるごとく、人それぞれに運命と言うものを生まれ合わせております。
とかく子の干支の方は終わり晩年が色情的関係において良くない。
丙午(ひのえうま)の女は家に不幸をもたらす、羊の女は角にも立たすな、蛇の女は執念深い。
ほら、この眉と眉の間。
これを印堂と言う。
ここに陰りがあるということはこれはいけない。
当たるも八卦当たらぬも八卦、人の運命などというものは誰にもわからない。
そこに人生の悩みがあります
作品によって、様々なバージョンがあります。
ちなみに、第32作「男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎」では、坊主のとなった寅次郎が、この口上をお説教の間に入れて語るシーンもあります。
易(人相・手相)の口上を使う作品- 第2作「続・男はつらいよ」
- 第4作「新・男はつらいよ」
- 第13作「男はつらいよ 寅次郎恋やつれ」
- 第15作「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」
- 第22作「男はつらいよ 噂の寅次郎」
- 第24作「男はつらいよ 寅次郎春の夢」
- 第42作「男はつらいよ ぼくの伯父さん」
寅さんが使う口上集(自己紹介&仁義を切る編)
続いて、自己紹介編です。
同業者に対してのあいさつ、仁義を切る時に使う口上になります。
映画「男はつらいよ」では、1作目と3作目で登場します。
今回は、両バージョンをミックスしたセリフにまとめてみました。
遅ればせの仁義、失礼さんでござんす。
わたくし、生まれも育ちも東京葛飾柴又です。
渡世上故あって、親、一家持ちません。
カケダシの身もちまして姓名の儀、一々高声に発します仁義失礼さんです。
帝釈天で産湯を使い、姓は車、名は寅次郎。
人呼んでフーテンの寅と発します。
皆様ともどもネオン、ジャンズ(ジャズ)高鳴る大東京に仮の住居まかりあります。
不思議な縁持ちまして、たったひとりの妹のために粉骨砕身、売に励もうと思っております。
西に行きましても東に行きましても、とかく土地土地のおあにいさん、おあねえさんに御厄介かけがちなる若造でござんす。
以後見苦しき面体お見知りおかれまして、恐惶万端引き立って、よろしくお頼み申します。
寅さんが使う口上集(地口・その他編)
地口とは、ダジャレや語呂合わせの言葉遊びのようなものです。
売り口上以外で、寅さんがよく口にしたものをまとめてみました。
・結構毛だらけ猫灰だらけ、お尻の周りはクソだらけ。
・タコはイボイボ、にわとり(鶏)ゃハタチ(二十歳)、いもむし(芋虫)ゃ、ジュウク(十九)で嫁に行く
・田へした(大した)もんだよ蛙の小便、見上げたもんだよ屋根屋のふんどし。
・やけのやんぱち、日焼けのなすび、色が黒くて食いつきたいが、わたしゃ入れ歯で歯が立たないよ。
・テキ屋殺すにゃ刃物はいらぬ、雨の三日も降ればいい。
まとめ
今回は、映画「男はつらいよ」シリーズで、寅さんが使う口上のセリフを啖呵売、自己紹介、地口などに分けて紹介してみました。
啖呵売に関しては、作品によっていろんなバージョンが使われており、その時々の空気や客層に合わせて口上のセリフを作り変えているのが面白いです。
自己紹介で使う口上も今となっては使う人はいませんが、人情を大切に生きてきた日本人らしさが滲み出ている感じがいいですね。