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全作品解説

映画「男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋(第29作)」の作品解説(マドンナ:いしだあゆみ)

2022年10月30日

この記事では、寅さん映画シリーズの「男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋(第29作)」の作品の見どころを解説していきたいと思います。

映画「男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋(第29作)」の予告編動画

映画「男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋(第29作)」の作品データ

映画「男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋(第29作)」のビジュアルポスター
公開日1982年8月7日
上映時間110分
マドンナいしだあゆみ
ゲスト片岡仁左衛門
監督・原作山田洋次
スタッフ製作:島津清/佐生哲雄
企画:小林俊一
脚本:山田洋次/朝間義隆
撮影:高羽哲夫
美術:出川三男
音楽:山本直純
録音:鈴木功
調音:松本隆司
照明:青木好文
編集:石井巌
スチール:長谷川宗平
監督助手:五十嵐敬司
装置:小島勝男
装飾:町田武
衣装:松竹衣装
アニメーション:白組
現像:東京現像所
進行:玉生久宗
製作主任:峰順一
協力柴又新明会
株式会社リコー
河井寬次郎記念館
主題歌男はつらいよ
観客動員数1,393,000人(シリーズ39位)
⇒「寅さんシリーズランキング
同時上映「えきすとら」
啖呵売した商品接着剤(ピッタリコン)、陶器
⇒「寅さんが啖呵売した作品別全商品リスト

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「男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋(第29作)」のロケ地情報

「男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋(第29作)」のロケ地
  • 木崎湖畔(長野県)
  • 大出吊り橋(長野県)
  • 下鴨神社(京都府)
  • 神馬堂(京都府)
  • 伊根町の舟屋(京都府)
  • 河井寬次郎記念館(京都府)
  • 成就院(あじさい寺)(神奈川県)
  • 江ノ島神社参道(神奈川県)
  • 江ノ島亭(神奈川県)
  • 彦根城(滋賀県)
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    「男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋(第29作)」作品のあらすじ

    京都に売に来ていた寅次郎は、人間国宝の陶芸家・加納作次郎(片岡仁左衛門)と出会う。
    作次郎の下駄の鼻緒を直してあげた寅次郎は、作次郎に食事をご馳走になるが、酔っぱらって作次郎の自宅へ連れて来られてしまう。
    寅次郎はそこで住み込みで働いていたかがり(いしだあゆみ)と出会う。
    かがりは作次郎のかつての弟子と結婚する予定だったが、その男が他の女性と結婚することになり、結婚が破棄となってしまう。
    居場所を失ったかがりは失意のまま作次郎の元を離れ、逃げるように実家に帰ってしまう。
    そんなかがりの事情を知った寅次郎はかがりの実家のある丹後に会いに行くが、かがりの積極的なアプローチに困惑し、逃げるように東京へ戻っていく。
    しばらく東京で寝込んでしまう寅次郎だったが、突然、かがりがとらやを訪問してくる。
    鎌倉のあじさい寺でデートをすることになった二人だったが、寅次郎がそのデートに満男を同行させてしまったことにより、かがりを傷付けてしまうことになる。

    「男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋(第29作)」作品のキャスト

    <メインキャスト>

    • 車寅次郎:渥美清
    • さくら:倍賞千恵子
    • かがり:いしだあゆみ
    • 竜造:下條正巳
    • つね:三崎千恵子
    • 博:前田吟
    • 社長:太宰久雄
    • 源公:佐藤蛾次郎
    • 満男:吉岡秀隆
    • 近藤:柄本明
    • 御前様:笠智衆
    • 加納作次郎:片岡仁左衛門

    <サブキャスト>
    岡嶋艶子/杉山とく子/西川ひかる/津嘉山正種/園田裕久/関敬六/マキノ佐代子/松谷たくみ/土部歩/三星東美/光映子/鮎川十糸子/片岡當勝/田口精一/羽生昭彦/篠原靖夫/金谷通利/星野浩司/竹村春彦/笠井一彦/戸川京子/北村克美/田島敬子/市丸和代/川井みどり/斉藤悦子/後藤泰子/谷よしの

    マドンナ:いしだあゆみ

    マドンナ:いしだあゆみ

    <役名:かがり>

    陶芸家・加納作次郎の家に住み込みで働いている奉公人。夫とは死別し、小学生の娘を丹後半島の母(杉山とく子)に預けている。寅さんとは加納作次郎の家で出会う。婚約相手にソッポを向かれて居場所がなくなったかがりは丹後へ逃げてしまうが、それを心配する寅さんが丹後まで足を運んで慰めてくれたことにより、二人の仲は深まっていく。しばらくして、寅さんに会うために柴又に訪れたかがりは、「鎌倉のあじさい寺で待っています」という手紙を残す。そして二人は鎌倉で出会うことになるが、窮屈そうにする寅さんの姿を見て、申し訳ないことをしてしまったと悟ったかがりは自ら身を引いていく。

    →「「男はつらいよ」に登場した寅さんの歴代マドンナ47人を徹底ガイド

    ゲスト:片岡仁左衛門

    ゲスト:片岡仁左衛門

    <役名:加納作次郎>

    京都に住む人間国宝の陶芸家。
    寅次郎とは京都の賀茂川(鴨川)で出会う。
    下駄の鼻緒が切れたのを寅次郎に直してもらったことがきっかけで仲良くなる。

    「男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋(第29作)」作品の解説

    この作品では、女性が自分に好意を持ってくれた瞬間から逃げ腰になってしまう寅次郎が繊細に描かれる。
    今作のマドンナ・かがり(いしだあゆみ)は、今までのマドンナにない性を匂わせる存在であり、寅次郎をかなり翻弄していく女性である。
    なので、寅次郎がそんな女性とどんな恋愛を繰り広げていくのかが見どころになるだろう。
    そして、まだ幼い満男が失恋で涙を流す寅次郎をはじめて目撃した作品であり、後の満男編に繋がっていく伏線のようにもなっている。
    また、サブキャラクターとして登場する人間国宝の陶芸家・加納作次郎(片岡仁左衛門)や、その弟子(柄本明)との絡みも心地よく、楽しい気分にさせてくれる作品だ。

    夢のシーン

    映画「男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋(第29作)」夢のシーン

    宿に困った旅人(寅次郎)が、貧しい家族の家に泊めてもらい、そのお礼として襖に絵を描いて恩返しをする夢。
    「グウ・・・」とお腹の音を確認するために、わざわざご飯の入った茶碗を3人の家族の鼻先に近づける寅次郎に笑ってしまう。

    男はつらいよシリーズ全夢のシーン紹介ページ

    初めて見せる寅次郎の女性への恐怖心

    映画「男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋(第29作)

    寅次郎が結婚に対して逃げ腰になるのはシリーズ中に度々見せていたが、この作品ではその理由をより明確に描き出したように思う。

    それは、男と女である以上、いずれおとずれるであろう性の問題である。

    寅次郎が今まで結婚を受け入れられなかったのは、この性に対してのコンプレックが心のどこかにあったからなのかもしれない。

    山田監督はこの作品ではじめて寅次郎のそんな性の問題を深くえぐってみせた。

    寅次郎は別の部屋からふと見えてしまったかがりの脚にドキッとしてしまい、逃げるように二階の部屋に上がってしまう。

    ところが、二階の部屋に上がってもしばらく寝付けないでいる寅次郎の元へ、かがりがそっとその部屋に入ってくるのだ。

    しかし、寅次郎は狸寝入りを決め込んでしまう。

    この一連のシーンはホラー映画さながらの演出がなされているが、寅次郎の抱える性の問題をうまく表現していたように思う。

    寅次郎の勝手な妄想か!?視聴者の解釈に委ねる曖昧な描き方

    この一連のシーンは山田監督の巧みな演出が光る。

    このシーンのすべては寅次郎の視点で描かれており、寅次郎が勝手に妄想を膨らませていた、という解釈もできてしまう。

    かがりの脚にドキッとしたのは寅次郎であり、かがりが狙ってそうしたものではない。

    また、かがりが部屋に入ってきた理由も寅次郎の勝手な思い込みといわれればそうなってしまうし、翌朝、かがりが寅次郎に対して不機嫌な態度を取っていたのも、気のせいといわれればそうも取れてしまう。

    つまり、この一連のシーンは視聴者が自由に解釈できるように、あえて曖昧な描き方をしたのだと思う。

    女性と一線を越えられない寅次郎のもう一つのコンプレックス

    映画「男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋(第29作)

    寅次郎が女性に対して持つ、もう一つのコンプレックスがこの作品では描かれたように思う。

    それは、鎌倉の江の島亭でのシーン。

    かがりがいつもと違う寅次郎を見て、以下のようなセリフを言ってしまうのだ。

    「私が会いたいなあ、と思っていた寅さんは、もっと優しくて、楽しくて、風に吹かれるタンポポの種みたいに自由で気ままで・・・せやけど、あれは旅先の寅さんやったんやね」

    この的を得たかがりのセリフに寅次郎は言葉を失ってしまう。

    まさに女性に対して持つ寅次郎のコンプレックスがこのセリフにそのまま表現されていたように思う。

    寅次郎は風に吹かれるタンポポの種みたいに自由気ままに旅をしている時はうまく女性と接することができる。

    それは、寅次郎が男と女という関係を意識する必要のないところにいるからだ。

    しかし、男女としての関係が発展していくと、どうしても一線を越えなければいけないフェイズが訪れるようになる。

    寅さんはそのフェイズに向かうことができないのだ。

    それはなぜなのか?

    きっと寅次郎は旅先の楽しいと思われている自分と、一線を越えなければいけないフェイズに向かう時の自分とのギャップに苦しんでいたのかもしれない。

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