この記事では、寅さん映画シリーズの「男はつらいよ 寅次郎物語(第39作)」の作品の見どころを解説していきたいと思います。
目次
映画「男はつらいよ 寅次郎物語(第39作)」の予告編動画
映画「男はつらいよ 寅次郎物語(第39作)」の作品データ
公開日 | 1987年12月26日 |
上映時間 | 101分 |
マドンナ | 秋吉久美子 |
ゲスト | 五月みどり/河内桃子 |
監督・原作 | 山田洋次 |
スタッフ | プロデューサー:島津清 企画:小林俊一 脚本:山田洋次/朝間義隆 撮影:高羽哲夫 美術:出川三男 音楽:山本直純 録音:鈴木功 調音:松本隆司 照明:青木好文 編集:石井巌 スチール:長谷川宗平 監督助手:五十嵐敬司 装置:横手輝雄 装飾:露木幸次 美粧:宮沢兼子 衣装:松竹衣装 現像:東京現像所 進行:副田稔 製作主任:峰順一 |
協力 | 吉野山観光協会 柴又新明会 |
主題歌 | 男はつらいよ |
観客動員数 | 1,434,000人(シリーズ歴代36位) ⇒「寅さんシリーズランキング」 |
同時上映 | 「女咲かせます」 |
啖呵売した商品 | 正月の縁起物(熊手、破魔矢) ⇒「寅さんが啖呵売した作品別全商品リスト」 |
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「男はつらいよ 寅次郎物語(第39作)」のロケ地情報
「男はつらいよ 寅次郎物語(第39作)」のロケ地「男はつらいよ 寅次郎物語(第39作)」作品のあらすじ
寅次郎のテキヤ仲間・政吉の息子の秀吉という名の少年が突然、とらやにやってくる。
父親の政吉は「俺が死んだら寅を頼れ」という遺言を残して他界。
秀吉に母親がいることも判明したが、詳しい状況がわからずに、しばらくとらやで秀吉を預かることにする。
翌日、運よく寅次郎が帰ってきて、秀吉と母親・おふでさんを会わせるためにおふでさんが働いているという和歌山県の旅館へと向かう。
ところが、おふでさんは何度も転職を繰り返しており、寅次郎たちは右往左往するハメになる。
そして長旅の疲れからか、奈良の旅館で秀吉が病気にかかってしまう。
そこで偶然、隣の部屋に泊まっていた隆子(秋吉久美子)の協力も得て、秀吉は何とか病気を克服し、元気を取り戻す。
秀吉の看病を共にしたことで寅次郎と隆子はいつしか「父さん、母さん」と呼び合うほどの仲になるが、おふでさんの居所が判明すると、翌朝、寅次郎たちは隆子と別れ、おふでさんのいる三重県の伊勢志摩へと向かっていく。
「男はつらいよ 寅次郎物語(第39作)」作品のキャスト
- 車寅次郎:渥美清
- さくら:倍賞千恵子
- 隆子:秋吉久美子
- ふで:五月みどり(特別出演)
- 竜造:下條正巳
- つね:三崎千恵子
- 博:前田吟
- 社長:太宰久雄
- 源公:佐藤蛾次郎
- 満男:吉岡秀隆
- 船長:すまけい
- 君子:河内桃子
- 菊田:松村達雄
- 御前様:笠智衆
<サブキャスト>
イッセー尾形/笹野高史/じん弘/関敬六/笠井一彦/篠原靖治/光映子/谷よしの/石川るみ子/川井みどり/マキノ佐代子/橋浦聡子/伊藤祐一郎/正司敏江/美保純/
マドンナ:秋吉久美子
<役名:高井隆子>
化粧品のアドバイザーをしている女性。ある男性と一緒に泊まるはずだった旅館で、秀吉少年を連れた寅さんと出会う。宿泊中に病気にかかる秀吉の看病を手厚く行ってくれる。過去に中絶の経験を持つ隆子の話を聞いた寅さんは彼女に同情し、いろいろ慰めてあげることになる。それによって寅さんとの距離が一気に縮まっていくが、秀吉の母親を探さなければいけない寅さんは、その場で隆子と別れていく。
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「男はつらいよ」に登場した寅さんの歴代マドンナ47人の紹介と演じた女優さん徹底ガイド
ゲスト:五月みどり
<役名:ふで>
寅次郎のテキヤ仲間・般若の政(政吉)の元妻であり、秀吉の産みの母親。
秀吉を生んだ後、政吉と別れて行方知れずに。
寅次郎とは政吉の妻であった時からの知り合いで、お互い顔見知りの関係である。
秀吉と再会した後、地元の船長と所帯を持ち、三人で仲良く暮らすことになる
ゲスト:河内桃子
<役名:君子>
賢島の老舗・松井真珠店の女主人。
病気で療養中のおふでの面倒を手厚く看る。
寅次郎とは、おふでに会いにやって来た松井真珠店で出会う。
「男はつらいよ 寅次郎物語(第39作)」作品の解説
今作は秀吉とその瞼の母親・おふでとの再会を果すまでのロードムービーである。
そのため、寅次郎の恋物語はほとんど描かれていない。
そして、サブタイトルにもあるように寅次郎の生い立ちや境遇をベースに、それぞれの人間たちが犯した過去の過ちを修復していく物語でもある。
そのため、この作品に登場してくる人物たちは過去に過ちを犯した人間たちが多く登場してくる。
また、生と死を匂わす対比が頻繁に描かれるため全体的にやや重く、暗い印象の残る作品だが、人間の生きる意味を再認識させられる作品であることは間違いない。
ところどころに寅次郎の死生観や人生観が垣間見れるのも興味深いところ。
そして、秀吉の病気を看る医者役として二代目おいちゃんを演じた松村達雄が登場し、終始笑わせてくれるのも見どころ一つになっている。
夢のシーン
少年時代の寅次郎が、親父とケンカをして家を飛び出した時の夢。
過去に体験した出来事を思い出すような形で描かれる。
なんと、その中でシリーズ中に一度も登場することがなかった、寅次郎の育ての母親(さくらの実の母)が映像を通して登場する。
寅さんとさくらの別れのシーンは、やや抽象的なイメージで描かれている。
実際には、柴又駅まで付いてきたさくらが、餞別として寅さんにおはじきを渡したということになっている。
→男はつらいよシリーズ全夢のシーン紹介ページ この記事では、映画「男はつらいよ」のオープニングで流れる寅さんの夢のシーンをすべてまとめてみました。 シリーズ全49作中、夢のシーンが含まれるのは全部で34作品。 人が眠っている時に見る夢というのは、 ...
映画「男はつらいよ」オープニングの寅さんの夢のシーン全まとめ
今作のテーマは「生きていてよかった」
今作のテーマを一言で表すと、「生きていてよかった」である。
今回の登場人物たちは、過去に何かしらの過ちを犯し、それをずっと引きずったまま生きてきた人たちだ。
秀吉の父親の政吉は、飲む打つ買うの三道楽で、奥さんのおふでさんに暴力を振い、泣かせ続けた極道者。
そして秀吉の母親・おふでさんはそんな極道者と暮らすことができず、息子の秀吉を置き去りにして家を飛び出し、そのことをずっと後悔しながら生き続けてきた。
また、今回登場するマドンナ・隆子も過去に中絶の経験を持ち、命を粗末にしてしまった自分の過去をずっと責め続けて生きてきた人物だ。
そんな過去に過ちを犯してきた登場人物たちが不思議な縁で寅次郎の元に集まり、心の傷を癒していく物語である。
この作品で御前様は寅次郎を以下のような言葉で表現している。
「仏様が寅の姿を借りてその子を助けられたのでしょうなあ」
秀吉とおふでさんを会わせてあげたいという寅次郎の一途な思いが、そこに関わるすべての人たちの心の傷を癒していく。
時に寅次郎の一途な思いが余計なお世話になってしまう可能性だってあるのかもしれない。
でも、この寅次郎の人と連れ添う姿勢が秀吉とおふでさんを会わせ、幸せへと導いたのは言うまでもない。
もしかしたら児童相談所にすらできないことを寅次郎はやってのけたのかもしれない。
この作品を観て思うのは、どんなに辛いことが起きたとしてもそれが永遠に続くわけではなく、生きていれば必ず「生きていてよかった」と思えることが訪れるということ。
柴又駅まで見送りにきた満男の「人間は、何のために生きてるのかな?」という問いに、寅さんが答えた何気ない言葉にも強いメッセージが込められていたのだと思う。
「あー生まれてきてよかったなあ」って思うことがなんべんかあるじゃないか、そのために人間生きてんじゃないのか
そして、とらやに届けられたおふでさんの年賀状には、「生きていてよかった」という文面がしっかりと綴られていた。
あけましておめでとうございます。
寅さんをはじめ、みなさんのお陰で秀吉と二人、幸せな正月を迎えることが出来ます。
つらいことはいろいろありましたが、今、生きていてよかったと心から思っております。
正月元旦 賢島にて
ふで 秀吉
寅次郎の死生観と人生観
この作品は、寅次郎の死生観や人生観が垣間見れるシーンが二つある。
一つは政吉の位牌の前で、酔っ払いながら語る寅次郎のボヤキ。
釈善政・・・何が「善」だい、悪いことばっかりしやがって、どうせ今頃は地獄の針の山かなんかでもってケツかなんか刺されて「イテテテテ」なんて言ってんだろう。
どんな人間でも取り得があって悲しまれ惜しまれ死ぬんだよ。
お前が死んだって、悲しんだのはサラ金の取立て人だけだったっていうじゃないか、ったく情けねえな。
たった一度の人生をどうしてそう粗末にしちまうんだ。
え?
おまえは何のために生きてきたんだ?
何?てめえのことを棚にあげてる?
当たり前じゃないか、そうしなきゃこんなこと言えるかい。
「てめえのことを棚にあげてる?」と自分で言い出しているところからも、寅次郎は自分に向かっても言っているのだ。
寅次郎は渡世人稼業ということもあり、今までにも似た境遇で死んでいった仲間たちをたくさん見てきたことだろう。
だから自分と重なる部分が多いのだ。
そして、二つ目のシーンはさくらが御前様から言われた「お兄ちゃんは仏様に愛されてるんだって」を教えた後の寅次郎の反応だ。
「フフフ、冗談じゃねえや、仏に好かれたっていい迷惑だい。
今度お参りしたら言っとけ、
そっちはその気でもこっちは愛しちゃいねえよーって」
仏様に対してすら突っぱねることができる寅次郎の感覚は素晴らしい。
寅次郎が世間に縛られることなく自由に生きてきた誇りがこのセリフから伝わってくる。
寅次郎は渡世人であることを誇りに思っているのだ。
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